ドキュメント作成の落とし穴──「整いすぎた文章」は危険です
「AIに文章を直してもらうと、なんだかすごく立派な文章になる」と感動したことはありませんか? 確かに、誤字脱字もなく、接続詞も完璧で、流れるような文章が一瞬で出来上がります。 けれども、だからといって志望理由書をAIに書かせてしまうと、ほとんど間違いなく落ちます。
「きれいな文章」であっても「リアリティ」がないので、落ちる
大学の入試担当教員は、何千通もの志望理由書を読んでいます。その中で、AIが生成した文章は「異様なほど整っている」ため、すぐに分かってしまいます。 文法的な間違いがないこと自体は良いことですが、AIの文章には致命的な欠点があります。それは「平均的すぎて、誰が書いたかわからない」という点です。 専門家の調査で、評価者は93%の精度でAI利用を見抜けるというデータもあるくらいです 。
AIは確率的に「最もありそうな言葉」をつなげて文章を作ります。つまり、AIに書かせれば書かせるほど、あなたの文章は「世の中の平均値」に近づいていくだけです。 総合型選抜で求められているのは「平均点」ではなく、「あなただけの尖った個性」や「独自の視点」ですよね。 文章の「拙さ」や「凸凹」こそが、実はリアリティを生み出す重要な要素なのです。「整いすぎた文章」は、かえって「自分の言葉で語っていない」というマイナス評価につながることを、強く意識してください。
AIを「赤ペン先生」にする
では、文章作成においてAIはどう使うべきでしょうか? 答えは、「ライター(書き手)」としてではなく、「エディター(編集者)」として使うことです。 絶対にやってはいけないのは、「この箇条書きを志望理由書にしてください」と丸投げすることです。これをやると、あなたの魂が抜けた「きれいな抜け殻」ができあがります。
代わりにおすすめしたいのが、AIを「赤ペン先生」にする方法です。 まずは、どんなに拙くても、自分の言葉で原稿を書き上げてください。文法がめちゃくちゃでも、情熱だけで書き殴ったもので構いません。 その上で、以下のプロンプトを使ってAIに「指摘」だけをさせるのです。
【実践プロンプト:赤ペン先生モード】
依頼: あなたは厳しい入試担当官です。以下の私の志望理由書案を読み、文章を直接書き換えることはせず、以下の点についてフィードバックのみを行ってください。
チェック観点:
- 論理が飛躍していて、初見の人には伝わりにくい箇所はどこか?
- 「なぜ?」とツッコミたくなるような、説明不足な箇所はどこか?
- 全体を通して、私の「熱意」や「人柄」が伝わってくるか?
出力形式: 該当箇所を引用し、辛口のコメントと、修正のヒントを提示してください。
このように指示すれば、AIは修正案を勝手に出すのではなく、「ここは分かりにくいよ」「ここはもっと具体的に書いたほうがいいよ」とアドバイスをくれます。 修正するのは、あくまで「あなた自身」です。 汗をかきながら自分で書き直すプロセスを経ることで、文章の端々に「あなたの体温」が残ります。この「体温」こそが、読み手の心を動かすのです。
「抽象的な言葉」を「映像」に変換する
もう一つ、AIを使うと陥りやすい罠が「抽象語の多用」です。 「グローバルな視点」「多様性の尊重」「持続可能な社会への貢献」……。 これらは耳あたりが良い言葉ですが、何千人もが使う言葉であり、つまり何も言っていないのと同じになってしまいます。
AIはこうした「賢そうな言葉」を使うのが大好きなんです。しかし、中堅以上の大学を目指す皆さんなら、そこから一歩踏み込む必要があります。 AIの書いた文章や、自分が書いた文章の中に、こうした「抽象的な言葉」があったら、すかさず「具体化」を行いましょう。これもAIと対話しながらできます。
具体化プロンプト(例): 「私はボランティア活動を通じて『多様な価値観』を学びました」という表現は抽象的でありきたりです。 私の実際のエピソードは「老人ホームで、認知症の方の話を3時間聞き続けたが、最初は意味がわからずイライラしてしまった。でも、その方の表情を見て、言葉以外のコミュニケーションがあることに気づいた」というものです。 この泥臭いエピソードの良さを消さずに、しかし志望理由書として適切な表現にするには、どう書けばいいですか?
このように問いかけると、AIは「『多様な価値観』という言葉を使わずに、『言葉に頼らない対話の難しさと、その先にある心の交流』と表現してはどうでしょう?」といった提案をしてくれます。 「きれいな熟語」よりも「映像が浮かぶ描写」のほうが、圧倒的に強いのです。
最後は「音読」して確かめる
AIの助けを借りて推敲した後は、必ず「音読」をしましょう。 AIが整えた文章は、目で読むときれいですが、声に出すと「息継ぎがしにくい」とか「自分の話し言葉とかけ離れていて気持ち悪い」と感じることがあります。 その違和感は正しいのです。 「なんか自分らしくないな」と感じた箇所は、勇気を持って、元の「拙い表現」に戻すのも一つの手。 「整っているけれど嘘っぽい文章」より、「不器用だけど本音が響く文章」。 総合型選抜で合格を勝ち取るのは、間違いなく後者です。 AIはあくまで「壁打ち相手」。筆を握るのは、最後まであなた自身だということを忘れないようにしましょう。
